公開日: 2023年6月30日 - 最終更新日: 2024年10月2日

ヤングケアラーについて知っていますか?

浦安新聞
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斉藤哲さん
(市民団体オムソーリ・プロジェクト代表)

 

新聞やテレビなどで取り上げられることが増え、注目されつつある問題「ヤングケアラー」。にも関わらず、「知らない」「聞いたことはあるけれど詳しく知らない」という人が意外に多いのが現状だ。

ヤングケアラーとは何か、今後どのような取り組みが必要なのかを、浦安市でこの問題に関わる活動を積極的に行っている斉藤哲さん(市民団体オムソーリ・プロジェクト代表)に聞いた。

 

ヤングケアラーとは

ヤングケアラーとは、家族にケアを必要とする人がいる場合に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の子どものことをいう。

ケアの内容はさまざま。具体的には、障がいや病気のある家族に代わって買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている、幼いきょうだいの世話をしている、目の離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている、ほかにも、日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている、家計を支えるために労働をしているなど。また、精神疾患のある親に寄り添い、精神面をサポートすることもヤングケアラーを定義するケアに含まれ、これは日本で多いケースと言われている。

問題なのは、いずれのケースも責任や負担の重さによって、学業や友人関係など子どもの生活に影響が出てしまうということだ。

 

周囲の認識と定期的な調査・評価を

「ヤングケアラーの全てが支援を必要としているわけではありません。人によってニーズはさまざまですが、大切なのは誰が当事者なのかを把握し、定期的に調査していくことです」と斉藤さん。「そのためには社会全体がもっとヤングケアラーについて知る必要があり、特に教育現場で認識が広まれば積極的に見つけることができる」と言う。

しかし、見つけただけで終わりではない。「初めの頃は生活に影響がなかったが、その後どんどん負担が増えていった」など、当事者の状況は変化していく。ケア対象の家族の病状等が悪化したり、ヤングケアラー自身の成長とともにできることが増え、結果的に過度な責任を負うようになってしまう場合もある。「定期的にアセスメントしていくことで、支援が必要なタイミングで周囲が気付きやすくなります」

 

浦安市の取り組み

市では2年前から教職員を中心にした研修会を実施。また、昨年9~10月には、市内小中学生を対象に「あなたの生活についての調査」を実施。児童・生徒から今の自分の生活についてどのように感じているかを聞き、状況を把握することで必要な支援につなげようというもの。今後、この調査結果をもとに、支援策について検討していくそうだ。

「今後はヤングケアラーも含めた子どもの問題全般を総合的に相談できる窓口が必要です」

 

当事者の声から

斉藤さんは昨年から市内の3団体と協力してシンポジウムや勉強会などを定期的に開いている。その中でヤングケアラーの認知度の低さを実感しているという。

「知られていないということは、子ども自身が、自分がヤングケアラーであるという認識を持ちにくいということ。だれもが安心して相談できるように、相談から適切な支援につなげられるように、行政、教育、福祉など多分野のスムーズな連携体制を構築することが大切です」

活動を通して、かつてヤングケアラーだった人たちに話を聞く機会があるという斉藤さん。「後になって自分がそうだったんだと気付いた」「当時は周囲にばれたくない・恥ずかしいと思って誰にも相談できなかった」など、多くの声を聞いた。中には、「ヤングケアラーだったことが全てマイナスではなかった。そういう情報も発信したい」という声もあるという。

「現在のヤングケアラーたちが集まれる場所づくりの必要性を感じています。雑談するだけでもいい、集まる場があれば同じ境遇の人がほかにもいることが分かります。何かあったら声を上げられることを、追い詰められる前に、仲間や思いを受け止めてくれる人がいることを知ってほしい。彼らの孤立を防ぎたいと思います」と語った。

 

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