健康な口腔環境を保つために大事な「歯磨き」。その際使用する歯磨剤に「フッ化物」(フッ素を含む化合物)が配合されていることが多い。虫歯予防に効果があるとされる「フッ化物配合歯磨剤」の安全性や正しい利用方法について、市川市歯科医師会の新谷明昌歯科医師に聞いた。
フッ化物配合歯磨剤とは
日本では現在、ほとんどの歯磨剤にフッ化物が配合されています。世界保健機関(WHO)でも、年齢を問わずフッ化物配合歯磨剤の使用を推奨しています。でも実際のところ、「歯磨剤っていろいろ種類があってよくわからない?」「体に悪くない?」などという疑問の声も聞かれます。
日本の歯磨剤に含まれるフッ化物濃度は、1450ppm、950ppm、500ppmなどで、使用する用量を守ればどれも安全であることが証明されています。
虫歯の予防には濃度の高いほうが有効です。しかし、厚生労働省が6歳未満の子どもには1000ppm以上のフッ化物配合歯磨剤の使用を控えること、手の届かない所に保管することを通知していることから、小さいお子さんには950ppmや500ppmのものを使ってください。
効果的な利用法とは
実際にフッ化物配合歯磨剤をどのように使用したらよいのでしょうか。
ここでのポイントは、フッ素の薬用効果を十分に発揮するため、少量の水で洗口すること、適切な量を守り、磨いた後は1、2時間飲食をしないことです。
実際に、予防大国であるスウェーデンのイエテボリ大学が推奨している方法(成人の場合)を紹介します。
●歯ブラシに2㎝の歯磨剤をつけ、歯面全体に広げる。2分間歯磨きを行い、歯磨剤の泡立ちを保ち、その後、歯磨剤を吐き出さずに10㎖の水を含んで30秒間そのまま洗口する。吐き出した後はうがいをしない、その後2時間は飲食をしない。
歯磨きをした後に、うがいをしっかりとしたい、うがいをしないと気持ち悪いと感じる方には、ダブルブラッシング法をお勧めします。
まず、歯磨剤を使用してもしなくてもいいのでしっかりと歯磨きを行います。そして、しっかりと洗口。その後フッ化物配合歯磨剤をつけて、歯全体にフッ素を届けるように磨きます。少量の水(15㎖程度)で1回うがい、またはうがいなしでも構いません。15㎖は大さじ1杯分の量です。
年齢別の使用量は?
2023年に日本の4つの学会が合同でフッ化物配合歯磨剤の推奨される使用方法を報告しています。
歯が生えてから2歳までは米粒程度(約1~2㎜)、3~5歳はグリーンピース程度(約5㎜)、6歳~成人・高齢者は歯ブラシ全体(約1・5~2㎝)で、歯磨きします。就寝前に行うことが有効です。
ただし、フッ素だけで虫歯を完全に予防できるわけではありません。しっかりと歯の汚れ(プラーク)を除去し虫歯の菌の居場所をなくすこと、虫歯の菌の栄養となる砂糖などの糖の摂取を管理すること、間食の時間を決めだらだら食べをなくすことなどが必要になってきます。
毎日行うことなので、なにか不安があれば歯科医院に相談してください。