知っておきたい医療情報をレポート
受診券が届いたときが検診のタイミング。ぜひ受診を!
女性特有のがんである「乳がん」と「子宮頸がん」は、近年、若い世代の罹患も増えているという。どんな病気なのか、また、早期発見のためのがん検診について、行徳総合病院婦人科の谷村史人医師に話を聞いた。
頸がんの検査で腺がんの有無もわかる
「痛そう」「恥ずかしい」「面倒くさい」といった、マイナスなイメージを持たれがちな婦人科検診。しかしながら、国立研究開発法人国立がん研究センターの調査によると、2020年に子宮頸がんに罹患した人は1万人以上、乳がんは9万人以上。死亡者数はそれぞれ約3000人、約1万5000人と、非常に身近である上に、決して死亡率が低くない病気であることがよくわかる。
子宮頸がんは子宮の下部にある子宮頸部にできるがん。行徳総合病院 婦人科の谷村医師は、「子宮頸がんが生じる主な原因は、性交渉によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)です。多くの女性が一生に一度は感染すると言われるウイルスで、その90%は免疫機能によって排除されますが、排除されず感染が持続すると異形成を経てがん化する可能性があります」と発症のメカニズムを説明する。30代半ばの罹患率が高く、若年層がかかりやすいがんであることが特徴だ。
性交渉がないからと言って、安心はできない。子宮頸部には腺がんと言ってHPV感染が原因ではない別の種類のがんも存在するからだ。谷村医師によると、「子宮頸がんの検査によって、子宮頸部から細胞をこすり取りますが、同じ検査で子宮頸部腺がんの有無もわかります」とのこと。早期に発見できれば早期治療が可能でありその結果、がんの予防につながると考えられる。「検査中はカーテン越しに実施して、数分で終了します。どうしてもハードルが高く感じてしまうかもしれませんが、女性医師がいるクリニックを選ぶなど、ご自身の最も安心できる環境でぜひ検査を受けていただきたいと思います」
タイミングとリラックスで痛みを軽減
乳がん検査というと、乳房を板ではさんでⅩ線検査を行う「マンモグラフィ」と、乳房に超音波をあて、乳房内部の状態を観察する「超音波(エコー)検査」が一般的だが、どちらが良いのだろうか。同院で放射線技師を務める舟川有香さんは、「どちらの検査にも、一長一短があります」と話す。市川市では30代は超音波(エコー)、40代以上はマンモグラフィの検査が行われている。もし異常が見つかれば、していない方の検査や乳房のしこりの一部を注射器で吸引するなどの精密検査を実施することになる。
マンモグラフィは、乳房をはさまれる際の痛さに、苦手意識がある人が多いだろう。なぜあんなにも強い力ではさまれるのか。「できるだけ乳房を薄く広げることにより、病変を見つけやすくするためです。また、乳房の厚さが薄くなることにより、被ばくの低減にもつながります」と舟川さん。検査方法の意味を理解することによって、少しは痛みへの恐怖を捨てられるかもしれない。生理前など胸が張っているタイミングを避け、検査時はなるべくリラックスした状態で臨むことによって、多少痛みは緩和されるとのこと。
手元に令和6年度の受診券は残っていないだろうか? いずれも早期発見・早期治療すれば、格段に生存率が上がる病気だ。苦手意識よりも健康な未来を優先して、せっかくの検診の機会を逃さないことをおすすめする。まずは検診ができる近隣の医療機関を確認し、受診しよう。