たくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募いただいた中から見事選ばれた特選2句、佳作3句を発表いたします。
選者コメント
読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。この俳壇も三年目を迎えることになりました。日本の暦では、十二月三十一日大晦日の除夜の鐘が鳴り終わると新しい年となります。俳句の歳時記の季語が、一瞬で変わる時です。新年の季語には、すべてのことが新しくて初めてということで、初日、初景色、初富士、初夢、初詣、初湯、書初、初電話、初電車、初旅、初場所など「初」が使われますし、また新しく始まるということで、仕事始、山始、琴始など「始」の字が使われます。暦上でたった一瞬で変わる一日を日本人はこのように大きな変化として意識してきました。移ろいやすい季節のちょっとした小さな変化さえ大きく感じ取るのが俳句の表現だと思います。
「若水へまるごと変はる水の星」成規
「去年今年貫く棒のごときもの」虚子
いちかわ俳壇
特選
- 寒禽の声夕暮を早めけり
(宮久保/まさみ)
【評】寒禽とは、寒い冬の時期に見かける鳥のことですが、特に声に特徴があるのは冬の鵙ではないでしょうか。鋭く鳴く声に、日の短い夕暮れがさらに早められたと作者は感じたのでしょう。寂寥感が滲み出ている句です。
- 意地根性遠き日に捨て日向ぼこ
(松戸市/若仙人)
【評】老いは眠気を誘います。ましてや日向ぼこをしている老人は無心の境地でしょう。若き日には気負っていた意地や根性は、齢とともにいつの間にか消え失せてしまったのでしょう。「遠き日に捨て」が老境を上手く表現しています。
佳作
- 楪や氏子親子の似る頑固
(八幡/ニアピン) - 無人販売の戸板に並ぶ蕪白し
(葛飾区/白翠) - 数へ日の素知らぬ猫の深眠り
(宮久保/虚空)
行徳俳壇
特選
- 荒行者粥を恃みの寒九かな
(幸/汐風爽)
【評】正中山法華経寺の荒行は有名ですが、参加した僧は冷水を浴び、読経三昧し、身も痩せ細る厳しい修行を百日間ほど続けます。修行中は、朝夕二回の梅干し一個と白粥が身心を保つための唯一の頼りです。まさに「粥を恃み」の厳しい寒行です。
- 月謝袋に最後の印や十二月
(富浜/流子)
【評】 月謝袋には一月から十二月までの印鑑を押す欄があり、月謝を出すたびに印が押されるのでしょう。今年の月謝袋もすべての月に判が押されました。お稽古か勉強の一年は長かったのでしょうか。それとも短かかったのでしょうか。そんな一年を振り返る感慨が伝わってくる句です。
佳作
- 城山の天守浮かせて山眠る
(宝/伊予小町) - 春隣時の壁超ゆ同級生
(行徳駅前/彩恵) - ふるさとの陽よ箱詰めの蜜柑来る
(塩焼/ニコ)
選者略歴峰崎成規。昭和23年生まれ。
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