「市民が笑顔になれる浦安」を目指して、街づくりを進めてきた内田悦嗣浦安市長。今年はどのような思いで街づくりに取り組むのか、話を聞いた。
下地ができた1年だった
昨年、浦安ではさまざまな動きがあった。子ども医療費完全無償化、給食費無償化、認知症条例に伴う施策の推進、ものづくり工房拠点「ファブスペース」の設置、海岸護岸の開放、護岸を利用した自転車のロードレース「クリテリウム」の開催など。
「コロナの影響が落ち着き、市民の皆さんの活動や止まっていた施策が動き出しました。より良い暮らしに向け、長年の懸案に対する取り組みや下地ができた1年でした」と、内田市長は振り返る。
福祉面では、日の出地区の高齢化進行に対応すべく、高洲地域包括支援センター(ともづな高洲)日の出支所の設置工事に着手し、今年4月の開所予定。ともづなでは高齢者だけでなく子どもに関する相談も受け付けているが、人員確保など相談体制のさらなる強化を目指す。千葉県内初の不登校特例校「学びの多様化学校」も4月の開校に向けて準備が進む。
「境川かわまちづくり」も本格的に動き出した。昨年12月には境川公園から東水門までを再整備し、遊歩道をオープン。今後は中町でのかわまちづくりについて検討を重ねていく。
また昨年はドライバーの労働時間に上限が設けられる、いわゆる2024年問題でバスの減便もあったが、「浦安市はいち早く補助金を導入し、いくらか復便できたことは成果だったと思います」。
新たに作るものと必要な余白
豊かな水辺環境のさらなる魅力向上を図るため、「水と緑のネットワーク」も進める。県から無償貸付されることになった第1期の埋め立て護岸(入船~今川)を整備していく予定だ。
「憩いの場になるよう、高洲~明海の緑道のイメージで整備したい。健康づくりを兼ねて市民の皆さんに街を歩いてもらいたいですね」
新たな施設については、特別支援学校が2027年開校を目指しているほか、消防署の舞浜出張所と舞浜地区の公民館も設置に向けた動きが本格化する。子ども図書館は、子どもの総合複合施設にすべく練り直し作業が続く。
一方で、「作らない」という決断もある。
「大型温泉施設の跡地は、乱開発防止とさまざまな課題に対応する意味で、市として活用していきたいと思います」
課題の1つが、災害廃棄物の置き場所だ。能登の地震・水害や岡山の水害を目の当たりにし、浦安で同様の規模の災害が発生したらどうすべきか、強く考えさせられたという。
「東日本大震災時は市内に空地がありましたが、今は開発が進みました。今後、マンション群も次々と大規模修繕が必要になりますから、工事関係の駐車場、資材や廃棄物置き場などに使うためにも未利用地は必須。街の機能を維持するには、余白が必要なんです」
変わりゆく浦安、対応も変化が必要
少子高齢化は浦安市も例外ではない。新浦安駅周辺地域では高齢者の単身世帯が増え、美浜北認定こども園は入園希望者が少なく、来年度の募集停止を決めた。
「すでに浦安市は成熟期に入っていることを市民の皆さんに認識していただくとともに、街づくりも見直していきます」
東日本大震災時に12%だった高齢化率は、現在18%。高齢者の多い地区では、避難所開設・運営など自助や共助が難しいことが想定され、災害への対応も変えていく必要がある。そこで考えたのが、中学生の力を借りること。中学校では昨年から避難所運営の授業をスタートし、発電機の使い方や簡易トイレ・パーテーション設営などを中学生に体験してもらった。
内田市長は、災害時において障がいや認知症のある人への対応も考えるべき課題として挙げる。状況や環境が変わることで思わぬ行動をするなど問題は出てくるだろうが、そのことを市民に知っておいてもらいたいという。
「皆さんに『やさしさ』をちょっと持ってもらうだけで、避難所の運営はスムーズになり、誰もが利用しやすい場を作れると思います。政策の一番根底にあるのは安全・安心ですが、その上に、市民がやさしさを持ちながら街での活動をさまざま展開していってもらうのが理想。それによってさらに街が強くなると信じています。課題や難しいことがあっても、ここを乗り切れば浦安は軌道に乗るはず。20年後の浦安を見ることが、今から楽しみです」