たくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募いただいた中から見事選ばれた特選2句、佳作3句を発表いたします。
選者コメント
世界一短い詩形といわれる俳句は十七音で構成されていますが、それ故助詞の選択は大変重要な意味を持ちます。俳句の助詞では「や」などとともに「の」が多く使われていて、今回の投句されました句の中にもたくさん見ることができます。「の」は「が」と同じように、その前に付く体言が主語であることを示し、その下に述語が続きます。今回の青空さんの「本音の混じる」の「の」がその例です。また、「の」はやはり「が」と同様に所有や限定の意味に使われています。正美さんの「石松の」や「新茶の香」の「の」はこの例です。そして「の」は「や」より軽い切れ字として使われる場合もあります。
「梧桐に少年が彫る少女の名」福永耕二(主格の「が」と「の」)
「梅雨冷のひとりが集ふ映画館」峰崎成規 (軽い切れ字の「の」)
いちかわ俳壇
特選
- 石松の啖呵ききたし新茶の香
(宮久保/正美)
【評】講談や浪曲でおなじみの「清水の次郎長」の子分・森の石松は、さぞ歯切れのよい勢いのある啖呵を切ったのでしょう。石松の出身地は茶の生産地・遠州森町と言われています。清々しい新茶の香りと気風の良い啖呵との措辞の組み合わせがとても新鮮に感じられます。
- 雑談に本音の混じるかき氷
(国分/青空)
【評】二人は雑談をしながら、かき氷をつついているのでしょう。かき氷は冷たいですので、少しずつ食べている間に、二人の会話もやはり長くなってきます。雑談だけをしているつもりが、ついつい本音の話をしてしまうという、人間心理をとらえた面白い作品になっています
佳作
- 希望にはさらなる希望二重虹
(宮久保/虚空) - 棟割りの蕎麦屋うなぎ屋夏のれん
(葛飾区/白翠) - 炎帝に追はれし鴉昼の黙
(八幡/ニアピン)
行徳俳壇
特選
- 寺町を渡るチェロの音青葉風
(幸/汐風爽)
【評】本行徳の一角には寺院が数多く並び、この地域を地元では寺町と呼んでいます。その中心的な寺院が徳願寺であり、その本堂で六月十五日の午後、チェロのデュオ・コンサートが開催されました。作者は本堂に響くその演奏に聞き入ったのでしょう。季節は青葉のころ、伽藍にそよぐ風にチェロの音が重なり流れていったのでしょう。 - 沼底にチューバ響かす牛蛙
(本行徳/かもめ)
【評】この句も楽器が詠まれています。チューバは低音部を深く重く響かせる金管楽器です。夏の夜にまるで牛の鳴き声のような声を出す牛蛙は、チューバの音によく似ています。牛蛙の生息している沼の底にまでその重低音の声がきっと響いて届いたのでしょう。
佳作
- 初節句倅の兜出して待つ
(宝/相川常子) - せせらぎに魚影探す夏はじめ
(富浜/流子) - 母と食ぶ朝焼色のメロンかな
(塩焼/ニコ)
選者略歴峰崎成規。昭和23年生まれ。
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