3月29日(金)~4月4日(木)の1週間、シネマイクスピアリで映画「浦安魚市場のこと」が期間限定で再上映された。31日(日)には舞台あいさつが行われ、歌川達人監督、映画に出演している森田釣竿さん(鮮魚泉銀)、深海光一さん(バンド「漁」メンバー)が登壇した。
2019年3月末、60年以上の歴史に幕を下ろした浦安魚市場。映画「浦安魚市場のこと」は、閉場間近の様子を収めたドキュメンタリー映画だ。2022年の12月に公開。シネマイクスピアリでは昨年1月に続き、今回約1年ぶりの再上映となった。舞台あいさつが行われた日は、浦安魚市場が閉場してちょうど5年にあたる日。会場には約140人が集った。
歌川監督は「浦安に住んで魚市場に通い、営業の邪魔かなと思いながらカメラを回していた。お忙しい中、撮影させていただけたこと、魚市場の方々には感謝の気持ちでいっぱいです」と撮影当時を振り返る。深海さんは「魚市場を手伝った経験もあるから、懐かしかった」と話し、森田さんは「時が止まり過ぎていて、懐かしくて…、(心に)響くね」と涙で声を震わせた。
「閉場から5年経ち、子どもたちは成長し、お年寄りの中には亡くなった人もいる。映っている人たちの時間も流れていると思うと、見え方が変わってくる」と再上映の意義を語る監督にこたえ、森田さんが「魚市場が忘れられないためにも、年に1度は上映を」と舞台上から映画館スタッフに頭を下げる一幕も。
「映画を観た後に浦安のお店を巡り、熱い気持ちで焼き蛤を買う人がいると聞く」と監督。「魚市場にあったお店は今もたくさん営業しているので、遊びに来てほしい」と森田さんは呼び掛けた。堀江にある森田さんの店「鮮魚泉銀」では、当時の旗やのれんが今も使われているという。
上映後はサイン会も実施。魚市場の様子を収めた写真集を手に、観客たちが熱い感想を3人に伝えていた。新浦安に住む女性は「映画が始まってすぐ、知り合いが元気そうに笑っている様子を見て涙が出た」と話した。慣れ親しんだ風景の映像に、当時のことを思い出す人も多かったようだ。
自主上映のオファーも多く、映画館はもちろん、学校や老人ホームでも上映されている。これからもこの作品を通じて、浦安魚市場の記憶は残り続けていく。