鍛金作家 三木瑛子さん(市川市在住)
「第4回 市川市文化振興財団 芸術文化奨励賞」を受賞した鍛金作家の三木瑛子さん。自然豊かな国への旅を通して感じた思いを表現していく彼女の作品は、大胆かつ繊細。2023年には「市川市ゆかりの作家展」に出展するなど、めざましい活躍を見せる三木さんに話を聞いた。
自然と工作が好き
授賞式で取材陣に囲まれ、「すごくうれしい。とても励みになります」と声を弾ませる三木さん。
幼いころから工作が大好き。身近な素材を使って、花や鳥など自然を感じる作品を作って遊んでいた。「何かを創作する人になりたい」と東京藝術大学に入学したが、そのときまでは鍛金とは全く縁がなかったという。
金属を触るとワクワク
鍛金とは、金属の板や塊に熱を加え、金槌で叩いて作品の形を作り上げる技法。
大学に入学して初めて、実際に鉄や銅を触ったとき「なんだかワクワクしたんです。制作途中に金属がいろいろな表情を見せてくれる。うまくいかないときは、この金属はこうなりたくないんだ…と、素材と対話しながら進めていく。それがなんとも楽しいんです」。
パーツを溶接で組み立てるときは、ガスマスクを着けて、「まるで工事現場にいるよう (笑)。軽いやけどは、しょっちゅうです!」。過酷な制作現場を楽しそうに話す。
コロンビアの文化に魅せられて
2019年、縁あってコロンビアで個展を開催した。その際に先住民の文化に触れ「大自然の中で、何かに縛られることなく臨機応変に生活している、今を生きている人々に、感銘を受けました」。そして、自然や神様に対する感性が日本と似ていることにも感動したという。
その時のインスピレーションを生かした作品を「市川市ゆかりの作家展~風の鼓動が響く~」に出展。一つひとつ違う表情を見せるコカの葉のオブジェや、金属と柔らかい毛糸を合わせた個性的な作品の数々が、観る者を優しい気持ちにさせた。
市川を発信のベースに
「空が好きで、学生時代モヤモヤしたときは、江戸川の土手で空を見上げたものです」。都心に近くありながら、緑も川も海もある。そんな市川が大好きだと言う三木さん。「もっともっと自由な心で作品を作り、市川を発信の拠点に頑張りたい」と目を輝かせた。
〈プロフィール〉
市立八幡小学校卒業。2012年東京藝術大学美術学部工芸科鍛金専攻卒業。2013年ドイツ ハレ Burg Giebichenstein ジュエリークラス留学。2015年東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻鍛金修了。東京藝術大学学部卒業制作にて原田賞受賞。2019年ギャラリーARCOT Museo Casa Grau(コロンビア、ボゴタ)にて個展。その他グループ展多数、ホテルやパブリックスペースに作品設置多数
コカの葉(2019年)
心をうつす夢(2022年)