『人類初の南極越冬船 ベルジカ号の記録』
ジュリアン・サンクトン/著 越智正子/翻訳(パンローリング)
今回紹介してくれたのは…
南行徳図書館 遠藤さん
〈おすすめコメント〉
ベルジカ号をご存知だろうか。ベルギーがオランダから独立してまもない1897年8月、華々しく出帆し、人類で初めて未知の南極で越冬した船だ。
閉ざされた氷の世界、極夜の闇、そのあとには終わりのない昼。人跡末踏の地球の底の一氷原は、脱獄不能の牢獄のようで、希望の持ちようがなかった。隊員のほとんどが正気を失い、死に直面した。隊員には、のちにスコットと南極点到達を競う若き日のアムンセンや、医師フレデリック・クックがいた。極地での豊富な経験を持ち、型破りなアイディアを出すクックがいたから全滅を免れたという。
また持ち帰った成果は多大で、その多くが新発見だった。
平和主義の隊長ジェルラッシュの本意ではなかったとはいえ、史上初の国際的な探検隊であった。今日も南極に根付いている国際協調の基本を示したといえる。
隊員たちの直筆の日記や航海日誌を基に忠実に描かれており、月明りで撮影された美しいベルジカ号の写真なども興味深い。