大荒行を成満
日蓮宗の伝統「百日大荒行」(ひゃくにちだいあらぎょう)を成満(じょうまん)した僧が、自身の寺へ帰る帰山奉告式が2月11日(祝)、本行徳の本久寺で18年ぶりに行われ、檀信徒と地域の人々が出迎えた。
修法師となるための伝統の試練
帰山したのは本久寺副住職の永野元晶さん(23歳)。同寺は室町時代末期の元亀3年(1572年)、本乗院日能上人による開山とされ、眼病守護、安産祈願の寺として知られている。
百日大荒行は、日蓮宗大本山・中山法華経寺の荒行堂に百日間こもり、睡眠は2時間、食事は1日2回のお粥とみそ汁、午前3時から裸に冷水を浴びる水行(すいぎょう)を1日7回、そして読経と写経を繰り返すという厳しい修行。昨年11月1日から今年2月10日まで実施され、全国から117人の僧侶が参加した。
無事に行を終えたことを成満と言う。成満した僧には、日蓮宗の加持祈祷(かじきとう)を行う「修法師」の資格が与えられる。元晶さんは県北部では最年少の修法師となった。
厳寒ものともせず境内で水行を披露
厳寒の午前10時、本塩の中台製作所前に参集した元晶さんと、共に成満した県内外の行僧4人が白装束で並び、檀信徒らのうちわ太鼓と「南無妙法蓮華経」を唱える声に導かれ、約300mの道を本久寺へと向かった。
境内で出迎えた壇信徒と地域の人たちを前に、元晶さんら行僧はふんどし姿となり水行を披露。経を唱えながら、手桶に汲んだ水を頭から全身に繰り返し浴びた。大荒行の一幕を垣間見た人々は、行僧らのひたむきさに大きな拍手を送った。
まごころ込めてこれからが本当の修行
続いて、本堂で帰山奉告式が行われた。
元晶さんには、県北部修法師会の中村友謙会長から成満を認める証書が授与され、県北部宗務所の田中貞真所長から修法師の辞令が伝達された。
元晶さんら行僧は、修法師だけに許される経を読み、祈祷の法具である「木剣」(ぼっけん)を振るった。
祝辞として、本山・真間山弘法寺の鈴木日晋貫首は「私も50年以上前に成満したときのことを思い出し、また心に火がついた。本当の修行はこれから。さらに学び成長してほしい」と激励した。
元晶さんは参列者に向かい、「大荒行は想像以上につらく、無事に帰ることができ安心した。この経験を生かし、檀信徒をはじめ人々にまごころで接していきたい」と感謝した。
寺と地域の繁栄に願いをこめて
今回の帰山奉告式は、元晶さんの父、永野元靖住職が2度目の大荒行の後、行ってから18年ぶりのこと。
檀信徒総代として参列した清水和夫さんは「18年前の式にも参列したが、息子さんが副住職として後に続き、頼もしい。寺と地域がますます繁栄してほしい」と願っていた。
本久寺の近所に住む義母に誘われ、本八幡から訪れていた30代の女性は「水行を拝見し、厳しい修行を乗り越えた強い気持ちを感じた。感動で鳥肌が立った」と話した。
証書授与
水行
本久寺に入る行列