第7話
この前、急に、ベシャメルソースを作れるようになった日がありました。
私は、夕飯に、コンソメスープを作ろうと思い、白菜とベーコンを切って、鍋に入れていました。だけど、鍋にコンソメを入れる直前に、棚の中に、シチューのルゥがあったことを思い出しました。だから、コンソメスープはやめて、白菜とベーコンのホワイトシチューを作ることにしました。
ルゥを入れるときがきたので、私は、棚の戸を開けました。そうしたら、シチューのルゥが、ビーフシチューのルゥでした。
私は、白菜とベーコンなら、ホワイトシチューがいいです。今思えば、あのときなら、まだ、コンソメスープに引き返すこともできたんだなと思います。だけど、私はきっと、ルゥがビーフシチューだったことに焦っていたか、または、もうすっかり、シチューを作りたい気分になっていたか、とにかく、コンソメスープに引き返すことは、思い浮かびませんでした。だから私は、ビーフシチューのルゥを、そこらへんに置いて、煮込まれた白菜とベーコンを待たせて、作ったことがない、ベシャメルソースを作ることにしました。
私は、ベシャメルソースの作り方を、インターネットで調べて、作りました。だけど、今はもう、ベシャメルソースの作り方を、忘れました。なんとなく覚えていることは、ホワイトシチューのルゥみたい、と安心したかと思えば、クッキーができあがりそうな気がして、心配になったりしたことです。私は、どうにかこうにか、鍋の中を白くさせたと思います。だけど、何かの味が足りなくて、それが、何の味なのかがわかりませんでした。そんなタイミングで、おっかが、仕事から帰ってきました。私は、おっかに、何が起きているのかを話して、何の味が足りないのか、味見をしてもらいました。私は、その様子を、昭和の台所みたいだなと思いました。おっかは、味見して、すぐに、「コンソメを入れればいいよ」と教えてくれました。だから私は、鍋の中に、コンソメを混ぜました。そうしたら、ホワイトシチューの味になりました。私は、おっかはすごいなと思いました。おっかが、「鶏がらスープの素でもいいよ」と教えてくれたので、私は、鶏がらスープの素を足していきました。こうして、コンソメスープからホワイトシチューに変更、と思ったら、ビーフシチューのルゥしかなくて、急いで、作ったことがないベシャメルソース作りに挑戦した「バタバタめし」は、なんとか終了したのでした。
エッセイ漫画 <ご近所さんの生活> ほかのお話はこちら
武井 怜
1988年生まれ。現在、両親と猫と千葉県市川市在住。動物、お笑い、海外のコメディ、甘いもの、お相撲などが好き。コミックエッセイ『気にしすぎガール~この世のあらゆる物事に気を遣いすぎる女の日常~』(KADOKAWA)発売中。