たくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募いただいた中から見事選ばれた特選2句、佳作3句を発表いたします。
選者コメント
俳句づくりは、現在でも旧仮名遣いが多く使われています。結社によっては、口語体を禁止している結社もありますが、口語体を上手に使用している俳句も少なくありません。ただ、俳句は旧仮名遣いで作られてきたという長い歴史もあり。またこの期間に多くの蓄積されてきた豊かな表現形式(例えば「や」「かな」「けり」などの切字)があり、多くの俳人はその伝統を引き継いでいます。現代仮名遣いと旧仮名遣いのどちらが正しいというのではなく、両者をミックスせず、そのどちらかで統一して俳句を作っていただきたいと思います。次は旧仮名遣いと現代仮名遣いそれぞれの二句です。
「今思へば皆遠火事のごとくなり」能村登四郎
「短日のもう燃やすものないかしら」池田澄子
いちかわ俳壇
特選
- 薬師仏慈悲の伏し目に秋思濃し
(宮久保/虚空)
【評】薬師仏は薬師如来のことで、衆生の病苦を救い、庶民に信仰されています。像の顔には病苦に苦しむ人々を見詰めるように憂いに満ちた伏し目が彫られています。現在でも、戦争禍や災害などで苦しんでいる人々を案じているような眼差しを、薬師仏は人々に投げかけているのではないでしょうか。「秋思濃し」が絶妙な措辞です。
- 白壁を這ふひともとの蔦紅葉
(葛飾区/白翠)
【評】真っ赤に燃えた蔦紅葉が一本、白壁を這い上がっている景です。蔦は普通、いくつも枝分かれしながら伸びてゆくのですが、この句の骨頂は中七「ひともと」の措辞です。白壁に一本の真っ赤な蔦紅葉が伸びていく景をとても上手に印象深く表現しています。
佳作
- 踏むたびにブルース流る落葉から
(国分/青空) - 敗荷や夕日に明日を託さざり
(八幡/ニアピン) - 禅寺に笑ひ弾けて秋うらら
(松戸市/若仙人)
行徳俳壇
特選
- 老鳥を手掌に包む霜夜かな
(行徳駅前/彩恵)
【評】季語霜夜で寒い夜が想像できます。老鳥は人に懐き易い手乗り文鳥なのでしょう。文鳥の原産国はインドネシアで、寒さは特に苦手です。飼い主である作者は、文鳥の生態をよく知り、寒い夜にはそっと掌で文鳥を包んであげています。老鳥をいたわる愛情が優しく表現されています。
- どんぐり笛胸軽くして吹き鳴らし
(行徳駅前/ニコ)
【評】 どんぐりの実の真中をくり抜いて空洞を作り、その縁から息を吹きかけますと、笛のような音色が発せられます。どんぐり笛は、胸をいっぱいに膨らませて勢いよく吹くのではなく、中七の「胸軽くして」吹くことで、優しい音色をきっと生みだすのでしょう。
佳作
- 離陸機のやがて光に天高し
(幸/汐風 爽) - 保護犬のお試し期間菩薩の実
(行徳駅前/人魚姫) - ねこじゃらし貧しく揺らす室外機
(宝/伊予 小町)
選者略歴峰崎成規。昭和23年生まれ。
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