公開日: 2024年11月8日

正月の風物詩「しめ縄づくり」最盛期

葛西新聞
  • シェア
  • twitter

地域に受け継がれる熟練の技

正月に玄関や神棚などに飾られる「しめ縄」の製造・販売を行う岸野明さんの自宅(鹿骨2)の作業場では、年末の出荷に向けて最盛期を迎えている。
しめ縄は、神の領域と現世を分け隔てる『結界』として、不純なものが入るのを防ぐために、新年に玄関や神棚などに飾るようになったと言われている。
以前までは、農家が稲刈り後の藁を使ってしめ縄をつくり、それを近隣の家々に配っていたが、その後は農家が副業としてしめ縄づくりを行うようになった。区内でも、昭和初期には500軒以上の農家がしめ縄を作っていたものの、都市化とともにその数も年々減少。現在、生産・販売を行っている7軒のみとなった。
岸野さんは、3代目の兄、岸野正義さんとともに、しめ縄の販売・製造を行っている。先代は小松菜などを生産する農家との兼業だったが、現在ではしめ縄づくりを本業としている。岸野さんのしめ縄は自家製にこだわり、埼玉県吉川市で稲を栽培。4月の苗作りから始まり、5月初旬に行われる田植えを経て、8月初旬から末にかけて青田刈りを行う。
稲は収穫後、すぐに乾燥機にかけられ、湿度管理をしている暗所で保管。この稲を使って、年間を通して製造している。
10月29日(火)、作業場では、年末の出荷に向けて作業に追われていた。初めにしめ縄の芯の部分に使用される稲穂の実を採った後の「稲わら」に、出穂前の青々とした稲の「実とらず」をより上げる。
次に、より上げた3本の縄をまとめて1本により上げていき、長さ約100センチのしめ縄を完成。緩まないように両手両足で押さえるなど、全身を使っての作業には、熟練の技が光る。より上げた後は、余分な稲を切り取って仕上げていく。
大きさや種類によるが、一日に約30本を製造。繁忙期の9月から12月中旬にかけては土曜日・日曜日も休まず作業をしており、作業は今年も12月末まで続く。
神社などへの出荷が多くを占めるが、しめ縄を知らない人にも手に取ってもらいたいと、わら製品を取り扱う業者と一緒にインテリアとして飾れる新しいしめ縄の製造にもチャレンジ。区内の名産品を紹介するインターネットサイト「えどコレ!」で販売を行っている。
「飾ってくれる人のことを考えながら、一本一本丁寧にしめ縄をより上げています。しめ縄という日本の伝統文化を一人でも多くの人に知ってもらえたらうれしい」と岸野さん。

  • シェア
  • twitter
The following two tabs change content below.

葛西新聞

学校情報や街の紹介企画が好評。主婦に読まれる地元情報紙。詳細はこちら(明光企画HP)

月別アーカイブ