『日本人の愛した色』
吉岡幸雄/著(新潮選書刊)
紹介してくれたのは… 浦安市立中央図書館 岡本さん
〈おすすめコメント〉
著者は江戸時代から続く京都の染物屋当主。伝統的な植物染めを求めて、古代の文献などを基に、途絶えていた色や染色法の復元に尽力してきました。
この本では、古代人が畏れ憧れた赤、「源氏物語」で印象的に多用された紫など、近世までの日本人の色とのつきあい方、物語に込められた想いなどを解説します。
日本語には色を表す語彙が多く、桜鼠、利休鼠、深川鼠、藤鼠など、鼠色だけで70種以上あるそうです。しかし著者は「いまもこの色彩は日本の万物のなかにあるのだが、色名が失われると、色そのものがなくなってしまうことにつながるような気がする」と言います。日本人が育んできた伝統色を失いたくないと奮闘する職人の矜持に背筋が伸びる思いがします。