疎開による両都市の
交流を次世代へ伝える
戦時中の学童疎開から今年で80年。江戸川区と交流が続く友好都市の山形県鶴岡市の鶴岡地区物産協同組合が、同市とのつながりを江戸川区の子どもたちに知ってもらおうと、区立小学校などに同市出身の絵本作家の絵本などを初めて寄贈した。
鶴岡市と江戸川区の縁が生まれたのは、第二次世界大戦中の1944年。都市部の児童らは地方都市や農村などの安全な地域に集団疎開をすることとなり、区内の国民学校でも集団疎開が行われ、現在の鶴岡市では約4200人の児童が生活した。
このことがきっかけで、疎開経験者を中心に文化やスポーツなど市民レベルで親交を深め、1981年5月に両自治体間で友好都市盟約を締結した。
学童疎開が行われてから今年で80年を迎え、疎開経験者の高齢化が進んでいることから、若い世代が当時の話を聞く機会は減少している。同組合は、つながりを若い世代にもっと伝えていきたいと考え、当時疎開を経験した児童と同世代の子どもたちに身近な絵本などの寄贈を決めた。
今回寄贈した図書は、鶴岡市出身の絵本作家ましませつこさん、つちだよしはるさん、さとうまりこさん3人の作品。同市で長く学校司書を務め、学校図書館アドバイザーとして活躍する五十嵐絹子さんらが選び、合計80冊を寄贈した。
区立第七葛西小学校(江戸川区西葛西7)には、20冊の絵本や児童書が届けられ、児童は友達と一緒に読んだり、読み終えた本を交換したりと、思い思いに読書を楽しんでいた。
同組合の眞田順久事務局長は、「絵本などを手に取った子どもが、集団疎開から続く両都市の温かい交流を知って、平和のありがたみを感じてもらえたらうれしいです」と話す。
同組合は、今後も保育園や小学校に毎年寄贈を行っていく予定だ。